オーバーアマガウ10年に一度の受難劇上演

胸に迫る十字架の場面

2000年7月29日付 キリスト新聞 第4面(生活・文化面)

写真家 佐々木宏


アルプス山麓の村、オーバーアマガウでは、十年に一度、キリスト受難劇を村人がこぞって上演する。今年は、その記念すべき年にあたり、この小さな村に、世界各国から大勢の人々が押しかけている。写真家の佐々木さん(68)=日本キリスト合同教会桜台教会員=が、その模様をレポートする。


オーバーアマガウの受難劇、ゴルゴダの丘

10年に一回、ドイツの人口5000人のバイエルンアルプスの山の麓にある小さな町は受難劇鑑賞の人々が世界中より訪れる。この町は木彫りの職人の多く住んでいるので有名であり、森や林に囲まれた美しい町である。「キリスト受難劇」が町の人たちによって上演されることで、世界的に有名になった。5月下旬から10月上旬まで4カ月の間に120回、エルサレム入城から復活までを朝9時半から午後6時まで、3時間の休憩時間をはさんで演じられる。

劇場は町の中心部にあり、4000人収容できる。横の列は約200人ほど、大きな体育館に観客席をつけ、舞台は青空のもと大きく広がっている。私は、6月中旬、幸運にも前の方の真ん中の良い席を与えられた。公演中、冷たい風が吹き込み、とても寒かった。観客は冬の服装をしている人が多く見かけられた。

ファンファーレと共に、聖歌隊が同じ服装で約50人、横一列に並び、すばらしい歌声を聞かせてくれる。場面場面の間はコーラス劇をつなげ、正面の舞台では、人によって聖書の場面の動かない絵が構成する。クライマックスは、ローマの総督ポンテオ・ピラトの前での裁判の場面、多くの住民、ユダヤの祭司長、祭司、ローマの兵隊、そしてヘロデ王など、民衆のイエスを十字架にかけろとの凄まじいシュプレヒコール。ついにイエスはムチ打たれる。すさまじい迫力。この劇場の音響の良さに、身も迫る思いである。十字架が登場する、意外にも大きいのには驚いた。十字架を背負ったイエス、重荷に耐えかねて倒れかかる。地面にたたきつけられた十字架の音が響き、劇を盛り上げる。ねかされた十字架に、イエスの体に釘を打つ。その槌の音もジンと迫る思い、思わず目頭をぬぐう人が多い。3つの十字架が立つ。手と足を釘だけで体を支えている。どういう風になっているのか不思議であった。十字架の七言が場内に響く。そして息絶えると同時に雷がとどろく。場内はシーンとして、すすり泣く声さえ聞こえる。しかし、復活の場面はすばらしい。マグダラのマリアが墓の前にすすみ、復活のイエス に逢い、希望に満ちた人々が見守るうちに劇は終了した。全員起立して手をたたく。

全員にドイツ語、英語、と日本人は日本語の台本が渡されていた。

劇全体を通して、ユダヤ人を暖かく理解しているようで、演じる人たちはイスラエルを訪ねて理解を深めたようである。過ぎ越の祭りの祈りもヘブライ語を使ったり。メノラー(七枝の燭台)も置いたり(実際には燭台は神殿にしか置かないのだが・・・)。

この季節のヨーロッパの日暮は遅い。9時ぐらいまで明るい。劇が終わり、宿舎に戻る途中、きれいな装飾を施した家々を散策しながら眺めつつ、劇を思い出しながらもどった。


(C)文:キリスト新聞社、佐々木宏
(C)写真:Verkehrs- Und Reiseburo Gemeinde Oberammergau OHG
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